テクノロジカル・リパブリック
著:アレクサンダー・C・カープ&ニコラス・W・ザミスカ/出版:日本経済新聞出版
確実に2026年必読の1冊。あらゆるビジネスパーソンはもちろん、人文社会科学系の人にこそもっと届いて欲しい。
この本は最近要約様々なニュースで耳にすることが増えた企業、Palantirの共同創業者でCEOのアレクサンダー・カープと同社のニコラス・ザミスカによって書かれている。Palantirはどんな時代背景のもと生まれた会社なのか、そしてソフトウェアを通じてどんな世界を目指しているのかが書かれている。そしてCEOは哲学で博士号を持っている。いわば、人文知の社会実装を成功させた一人と言えるだろう(その賛否は別として)。
そして何より、このAIの時代の光と影も見えてくる。読んだ上でどのようなスタンスを取るのか、ぜひ考えてみて欲しい。
超知能AIをつくれば人類は絶滅する
著:エリーザ―・ユドコウスキー&ネイト・ソアレス/出版:早川書房
『テクノロジカル・リパブリック』とあわせて、今年の必読書の1冊。シンギュラリティ悲観派の古典的な本。超知能AI(ASI)が出来た時、どんなことが起こりうるのか、仮想シナリオと実際の技術動向に関する説明の2つで構成されている。
個人的には悲観シナリオは悲観しすぎ、そもそもシンギュラリティ自体はもう起きていて、その変化の中にある状態(かつ産業革命のようなドラスティックな変化はない)と思っている側なのであんまり刺さらなかった。ただし、資源開発と同様、ルールなき開発(R&D)がどのような帰結を生む可能性があるのか、知っておくこと自体に損はないと思う。
倫理的野心を持て
著:ルトガー・ブレグマン/出版:文藝春秋
原著に続き、日本語版の登場。正直、日本語版の方がより自己啓発書感が強いのでよりこちらをおすすめしたい。自己啓発されてほしい。
敢えてティピカルな言い方をするなら、いい大学に行っていい会社に入るチャンスがあるなら自己の特権性だ、資本主義だ、家父長制だと言う前に、お金を稼いでその分、寄付するなり、サイドプロジェクトやるなりして、自分にしかできない(カードの持ち札がなければできない)方法で社会変革をしようよと思う。
現状に全く何も問題がないわけではもちろんないけど、なにもパイプライン爆破だけが気候危機の解決策ではないし、そこまで単純じゃないよねと思う。そしてそう思いながら仕事をしている全ての人にリスペクトしたい。
ゼロ・トゥ・ワン
著:ピーター・ティール/出版:NHK出版
こちらも何回目かの登場。前回は「ゼロ・トゥ・ワンはアメリカの思想書だ」という文脈でリストインしたが、今回は自己啓発、キャリアの文脈で読んでみた。
競争ではなく独占はキャリア文脈でも解釈できるのではないだろうか。周りの優秀な同期や先輩、後輩と”競う”のではなく、むしろ唯一無二性を高めて、代替可能性を下げていくことによって価値を作る、積み上げていくという方法もあるんじゃなかろうか。そしてこの本を読み返した時に、自分が今までやってきた生き方がそのように説明できることに気づき、改めてこの本が自分にとってもバイブルなんだと思った。
この本ももうしばらくは語り継がれると思うのでぜひまだ読んだことがない人は読んでみて欲しい。
アバンダンス――「豊かな時代」を呼びさませ
著:エズラ・クライン&デレク・トンプソン/出版:NewsPicks Publishing
何かの本か動画で、アバンダンスは左派からのマニュフェストだ(右派はテクノロジカル・リパブリックだった気がする)という話を耳にした。この本自体はとても退屈で、エズラ・クラインのPodcastからは想像できないほど、内容が薄い。しかし、ともすれば資本主義やめて脱成長だ(と言う本人は最近、ブランドものの服に身を包み、しょーもないYouTubeに出ているが)、コミュニズムだ!となる中で、そうではない方向を示したという点はもう少し評価されてもいいだろう。
資本主義が大好きという人は必ずしもマジョリティではないと思う。しかし、かと言ってこれ以上に”最適な”仕組みもないように思える。そうした中で、豊かさ(アバンダンス)に注目し、左派的な言説に乗せることに成功したこの本はそういう意味で救いのある1冊だ。